幻燈

書きたいときに書きます。

怖い話


シフト制は、波が激しい。




つまり、めちゃくちゃ楽な週とめちゃくちゃ忙しい週があって、



かなりよく言えばメリハリのある生活を送れる。




規則正しい生活が苦手だし嫌いな私にとっては、




それは何だかんだ嫌いじゃなかったりするんだけど、




月の後半が忙しいシフトの場合、




毎度祈るような気持ちで来月のシフトを待たなくてはいけない。




毎月合格発表を見に来た受験生の気持ちを味わえてとても良いです。良くないです。





前半キツめなシフトが来たら心は大荒れです。




今月は特に前半が楽シフトで、




それはもう本当に、
え、こんなに働かなくていいの?





ってくらいで、




まるで大学生の頃に戻ったような気分で日々を過ごしています。(数日後には地獄の通し連勤が始まるんだけど)




特にやることもないから、YouTubeを見て、実家に帰って犬と遊んで、ゲームして、ひたすらにダラダラぐうたら、ああ1年前は毎日こんなんだったなあって思いつつ、




今現在何者にもなれていない自分と、
今ならまだ間に合うかもっていうきもちと、
いやもう今のままでもいいやって気持ち、




でもこのまま普通に結婚して子供産んで、
ごくありふれた大人になる自分を想像してゾッとしてみたり、




意外にも心が青い自分を嘲笑ってみたり、




でも最終的にはとんでもない焦燥感に駆られて、




かと言って何も行動を起こせなくて、
とりあえず、iPhoneのメモ帳に文章をダラダラと書き連ねていたら、




画面の端に布が写った。





黒色の布。服?ていうか、袴?




え?




見上げてみると見覚えしかない顔がそこにあった。





芥川龍之介じゃん?




いや、正真正銘の芥川じゃん??




何故か白黒だけど。




え、本物も白黒なの?
いや、ていうかこれ本物なの??




部屋は大荒れだし、髪はボサボサだし、部屋着のまま、というか、下半身は布団の中に隠れているとはいえ下着だし、こんな状態を誰かに見られること自体大事件なんだけど、それ以上の大大事件。




困惑して固まっていると、




「何者かになれる人間なんていないよ。」



って声がした。




え、まさかお前が喋ったの???



黙ってると、




「ねえ、聞いてるのぉ?」




明らかに芥川らしきものから声がするし、よく見ると一応口が動いている。




いやいや、芥川はそんな喋り方しないだろ。いやでもわいは芥川が喋ってるの聞いたことないし、もしかしたらこんな感じだったんか??いや、でもそんなエピソード聞いたことないし、もしかして昔の人ってみんなこういう喋りだったんか??





憧れの人を前にして声が出せないとかではなく、情報量が多すぎて完全に私の頭は処理落ちしてしまった。





「まあ、いいけどぉ。わいも生きてるときは結構病んでたけど、ああいうのもう古いじゃん?」



勝手に喋り出すし。




「大体ネトフリがある世界に生きてて何で病むん?あれがあればわいも自殺しなかったしぃ」




ネトフリ。




意味わかんなすぎるけど、一応憧れの人に会えたわけだし(?)いい加減何か言葉を発しないとと思った私はなんとか、




「あの、ネトフリを、ご存知なんですか……?」




「あったりまえじゃ〜ん!」




今は大正生まれの人でもネトフリ見る時代らしい。


令和ってもしかしたらすごい時代なのかもしれない。




こんなハチャメチャな時代にならもしかしたら私でも、少しは足跡をつけれるかも、って思った。